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1.故人との別れの時間を求めて

S様から最初にご相談のお電話をいただいたのはご依頼をいただく1年前のこと。

「菩提寺との付き合いをやめたい」とのご相談でした。

今回お父様がお亡くなりになりお墓があったお寺にそのことを伝えるとお悔やみの言葉一つ無く「お布施として300万持ってきてくれ」とぶっきらぼうに言われたそうです。

そして葬式の当日に来てもらうも法話では自分の自慢話しばかり。故人に申し訳ない気持ちで、このお寺には二度と頼みたくないと思ったそうです。

「亡くなった父と残された家族が安心できるよう良いお坊さんを紹介してほしい」

お電話の震える声は怒りと悲しみに満ちたものでした。その後、菩提寺と話し合いの上に檀家を抜け、1周忌の法事依頼をいただくことになりました。

合わせて戒名をつけ直したいとのご要望があり、40代のお坊さんをご紹介。お電話で故人様のことや思い出などを聞かせていただき、厳しさの中に思いやりとユーモアに溢れるお父様にぴったりな戒名が付きました。

 

「ここまで父のことを聞いていただき私達の希望も受け入れてくれると思いませんでした、前の菩提寺には何も聞かれなかったので・・・」

その後、お坊さんがどのようにして戒名の文字を選んだのかどういう想いを込めて付けたのかを書き記した資料をお渡しさせていただきました。

菩提寺に対する不信感でずっと気持ちの整理をつけることができなかたS様。

 

「ようやく父と向き合える時間をゆっくり取れる」

とのお言葉がとても印象的でした。

 


2.子供の成長を願って

「子供にわかりやすくお話しをしてもらえるお坊さんはいるかしら?」

N様のお父様がお亡くなりになられ、49日忌の法事依頼のご要望でした。病気と闘い最後まで弱音を吐かないお父様だったそう。

N様には5歳のお子様がいらっしゃり、おじいちゃんとお子様は大の仲良し。大変なおじいちゃん子であったので「もうおじいちゃんと会えない」とショックを受けているとのことでした。

そんな娘に何と言ってあげればわからないと悩まれてる様子です。

「お坊さんの法話は難しくて私達でもわからない」
「子供が少しでも死ということを理解して前向きに生きて欲しい」

お坊さんのお話しは難しいと思われがちですが、実は仏教の話しは難しいものではなく残された皆様がこれから生きていくためのヒントがたくさんあるのです。

 

「それは伝えるお坊さんによって差があるのですよ」とお話しをさせていただきました。

 

担当のお坊さんにご事情をお話しし、お子様に向けて少しお話しをする時間をとってもらいました。

 

また、事前にお子様にはおじいちゃんに向けたお手紙を書いてもらうことにしました。お手紙をお坊さんに渡してもらい、その想いを天国のおじいちゃんに届けるために。

 

今では7回忌を終え、当時のお子様も11歳になりました。

その時のアンケートで

「子供の成長を一緒に見守っていただけています、本当に良いお坊さんと巡り会えました」

とのコメントに、お坊さんの役割とはきっとこういうものではないかと感じさせていただけました。

 


3.多くの出会いからたくさんの学びを

毎年お盆のご依頼をしていただくK様。K様は5年前にご主人様を亡くされ、関西のお寺を墓じまいして東京で息子様と一緒に暮らされています。

 

その際にお墓を探されていたので民間霊園をご紹介させていただきました。足腰が悪くお墓参りには頻繁にいけませんが、毎朝お仏壇の前で手を合わせるのが日課です。

 

そして必ずお盆にはご自宅にお坊さんを招きます。

「今私がこうして生きているのも主人とご先祖様のおかげ、お盆には手を合わせて感謝の気持ちを伝えたい」

 

年忌と毎年のお盆のたびに毎回違うお坊さんでのご依頼をご希望されるK様。その理由を尋ねると

 

「たくさんのお坊さんと会って色々なことを教えてもらいたい」

 

とのことで、大変勉強熱心なご様子です。というのも、これまで教わった多くのことをお子様やお孫様に伝えたいんだそうです。

”私がもし亡くなったとしても前向きに生きていってほしい”

ご自身の体験からきっとたくさんのことを学ばれたのだと思います。地域によってはお坊さんとの付き合いが希薄になっていますが、K様のように仏教に触れ大切にされている方もまだまだ多くいらっしゃいます。

生きていくために大切なことを、これからもずっと伝え続けていきたいとおっしゃっていました。

 

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